これからは「個の力」の時代
子供と行った近くの図書館で、出口治明さんの本「人生を面白くする 本物の教養」を発見し、借りてきました。
第一章の「教養とは何か」から始まり、「日本のリーダー層は勉強が足りない」「出口流・知的生産の方法」「本を読む」「人に会う」「旅に出る」「教養としての時事問題」「英語はあなたの人生を変える」と続き、最後の章は「自分の頭で考える生き方」でした。
その中で印象的だったのは、
日本は、「キャッチアップモデル、人口増加、高度成長」の三点セットがきわめてうまく機能したピラミッド型社会、それが戦後の日本の社会
というフレーズ。
そして、
青田買い、終身雇用、年功序列、定年制というワンセットの労働慣行のなかでは、大学で何を勉強したとか、教養があるとかないとか、そのようなことは一切問われません。極論すれば個人の個性や主体性などは、実はどうでもよかったのです。むしろ言われた通りに働く没個性な集団のほうが都合がよかった。そのような社会システムのもとで、日本は高度成長を謳歌し、復興を果たしてきたのです。
・・・中略・・・
人口が減り始め成長が止まり、あらゆる指標が頭打ちになったいまの日本こそ、普通の国に戻ったというべきです。
普通の国に戻った日本ですが、本に書かれている通り、企業の戦略はまだ過去の成長モデルのままです。やっと、ごく一部の企業で変わり始めているというところでしょうか。採用はまだ画一的ですし、大学院での研究や経験を活かした配置ができているかというとまだまだです。
やっと企業でもダイバーシティという言葉が注目され始め、副業が容認(まだ積極的な企業は少ないので、あくまで「容認」で「推奨」ではないのが残念です)されるようになってきました。これは、この本にある「個の力」が問われてくるようになった時代であることに気づきはじめた人が増えてきたからだと思います。
ただし、「個の力」は、個人個人の個性を発揮すればよいかというとそうではありません。この本のなかでは、教養は
行き詰まりをブレイクスルーするオリジナリティ、さまざまな相手を惹きつける「面白さ」「人間的魅力」、自分の頭で考える力
とかかれている一節があります。ただ、情報を知っているのでは、いまはネットで調べられる時代ですから、さほど価値はありません。その情報を自分の中で蓄積、整理し、応用して実践できること、そのためには、自分の頭で考えることが必要なのです。
今、政府が大人の学びを一生懸命呼びかけていますが、それは、国際競争に勝つためには、学ばなくては勝てないからです。勝ち負けがすべてではないものの、競争力を強くするためには、これまでのいろんな考え方を変えて、個人個人の能力をより発揮するためには何ができるかに取り組む時代に変化してきているのでしょう。
そして、私は「個の力」を増すためは、①振り返り力(自分の経験を振り返り、これからの人生プランを立てる力)、②繋がり力(いろんな人の強みを理解し、繋がることで、自分にかけている強みを補う力、チームでバランスよくそれぞれの強みを活かしていくように土台を整える力)、③自己プロデュース力(個人の強みや、所属している組織の魅力を相手に伝え、周りにファンを増やす力)の3つが必要だと思っています。
本の第一章では、「教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツールです」と書かれています。教養をワクワクの種と考えると、ちょっと難しい本や、これまで興味がなかったジャンルにも手が伸びるかもしれません。過去の成長モデルを捨て、新しい成長モデルを手にいれるためにも、まずは、本を読み、街にでかけて、自分の頭で考えることを徹底していくことが求められています。
まずは、難しく考えすぎず、本を一冊手にとる、これまでいったことのない場所へ旅するなど、自分のできそうなことからはじめてみてはいかがでしょうか。
私も、これまで手にとらなかったようなジャンルや作家の本を手にとることからはじめてみたいと思います。