人事的な公平性とは何か

日本労務学会 第46回全国大会報告より

「正社員ポートフォリオの限界と人事管理の未来」学習院大学経済学部 守島基博先生

ダイバーシティという言葉から、女性活躍推進へ、そして、働き方改革という言葉に流行りが変わった気もしますが、確実に、日本の正社員は、男性、長時間労働、終身雇用モデルから、変化してきています。

 

 いろんな学説や見解があると思いますが、一つは、終身雇用が保証できなくなったことが大きいのではと感じています。企業は絶えず、世界の企業と戦っていて、これまで、大丈夫とされてきた大企業も、明日はどうなるかわからない。倒産しなくても、経営が外資に変わったり、事業所や工場の統廃合や、仕事がIT化されて人間を介さなくてもよくなったなど、私が働き始めた2×年前とは大きな変化があります。

 そんななかで、明日の仕事を保証できないし、働く私たちとしても、特段なにもなければ、定年までいることが当たり前だった時代とは気持ちの持ちようは変わってきています。終身雇用モデルって高度経済成長期の特徴だっただけだと思うのですね。

 そして、多様になればなるほど、人事の運営上困るのは「公平性」です。

人事担当者が、この仕事についてかなり口酸っぱく言われることの一つに「公平性」があるとおもいます。守島先生のご報告でも、公平性とは、端的にいえば「雇用形態や人的資源としての特徴を問わず、各人の仕事(その具体的内容をはじめ、責任、権限、労働時間、拘束の度合等)に応じた賃金その他の処遇を得られるということ」と触れられており、「従業員の認識としても重要な要因である。組織行動論において、公平性の認識は、人事制度または処遇結果等の納得性または受容に繋がり、個人のモチベーションや組織パフォーマンスに盛況があるという知見が多く蓄積されている(Conlon,Meyer and  Nowakowski,2005)」と触れられています。

 従業員の感じる公平性って何でしょうね。これまでであれば、同じ状況だと同じ福利厚生のサービスを受けることができるとか、同じ年度に入社したら、給与が同じくらいとか(つまり、進級試験も大体年度で決まっている)、そんな同質性が高いイメージだと思います。

 これからの公平性は、ほんとに難しい。成果に対して同じ給与を払うのですら成果の計り方が難しい。多分最終的には、サイボウズ

https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001020.html

で行われているような、「市場価値で決める」という流れになるのではと思います。そして、合意が得られない場合は、転職していくという、人材の流動化がもっと進むでしょうね。

 同じことを同じようにやる人が評価されてきた画一的労働は、ロボットや自動化で減ってくるでしょうし、人でしかできないという仕事はAIの出現でかなり減ってくるでしょう。その中で、労働価値も「対 ヒト」ではなく、「対 AI」「対 ロボット」で計られるようにもなってくると思います。あなたのしている仕事は、AIやロボットよりも価値がありますか。ということが如実に問われるし、ロボットの導入費用と、あなたの給与を比較すると、ロボットの方が安いので、明日から仕事がないですということも、あるかもしれません。

 その場合の公平性とは何か。「人事」ができることは何か。採用すらAIの力が発揮される、20年後の人事の考える公平性とはどのようなものになるのでしょうか。

 

 さて、今日もいい一日になりますように。